インドネシアの景気対策…3年半ぶりの利下げで予想外の金融緩和

●インドネシア中央銀行が利下げを実施

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インドネシア中央銀行は2024年9月18日に利下げを実施しました。

これは、2021年2月以来約3年半ぶりとなるものです。

この利下げは、景気の下支えを狙う処置であることは間違いありません。

同日に予想される米連邦準備理事会(FRB)の利下げに先立って、金融緩和に踏み切ったのです。

このインドネシア中郷銀行の利下げは予想外というのが大半の見方でした。

この利下げによって、主要政策金利の7日物リバースレポ金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げ6.00%としました。

ロイターによるエコノミスト調査では33人中3人のみがインドネシアの利下げを予想。

残りは据え置きを予想していました。

そのため、プロでさえも騙された今回の利下げとなったのです。

また、翌日物の預金金利と貸出金利もそれぞれ5.25%、6.75%に25bp引き下げとなりました。

インドネシアのペリー・ワルジヨ中銀総裁は今回の決定について、今年と来年のインフレ率が低水準で推移するとの中銀予測、安定したルピア相場の見通し、経済成長を支える必要性といった3つに合致するものだと説明しました。

ペリー・ワルジヨ総裁は、米金融政策の方向性が明確(利下げ)になり、米国債利回りが大幅に低下したと指摘しています。

ドルも軟化傾向にあり、インドネシア中銀に利下げ余地が生じたため「FRBの決定を待つ必要がなかった」と述べたのです。

引き続き今後の追加の利下げ余地を判断するとも語っています。

ペリー・ワルジヨ総裁は今後も資本流入を促すため、オペを活用すると発言。

ルピアの下支えに必要な場合は市場介入を実施すると述べました。

ルピアは今年に入り大きな圧力に見舞われていましたが、その後反発。

対ドルで昨年末の水準を小幅に上回っています。

インフレ率は昨年半ば以降、インドネシア中銀の目標レンジ内で推移しています。

DBS銀行のエコノミスト、ラディカ・ラオ氏は「最近のルピア高に加え、米利下げがほぼ確実視されているため、早めの緩和サイクル開始が可能になったのだろう。年内にあと1回の利下げを予想する」と述べています。

インドネシア中銀は今年の国内総生産(GDP)伸び率が予想レンジ(4.7─5.5%)の中間値(5.1%)になるとの見方を維持。

来年については予想レンジ(4.8─5.6%)の中間値を上回る可能性があるとの見方を示しました。

キャピタル・エコノミクスのガレス・レザー氏は、インフレに対する懸念が近く浮上する可能性は低く、追加利下げの余地があると指摘しています。

今回のルピアの利下げとインドネシア中銀のハト派的なコメントを受けて、今年末の主要政策金利の予想を5.75%から5.50%に下方修正しました。

●インドネシアの取引所「Indodax」、ハッキング被害で約31億円相当流出

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インドネシア拠点の暗号資産取引所の「インドダックス(Indodax)」が、ハッキング被害により約2200万ドル(約31億円)相当の暗号資産を流出させたと発表がありました。

ブロックチェーン調査会社スローミスト(SlowMist)が9月11日に報告しています。

報告では、今回のハッキングは同取引所の出金システムの脆弱性をついたものであり、ホットウォレットから資金が引き出し可能な状態になっていたというのです。

スローミストによると、ハッカーはETHやPOL、USDT、USDC、ARBなど多くの暗号資産を盗み出すことに成功しているとのことです。

オンチェーンデータ分析プラットフーム「アーカム(Arkham)」のデータによれば、「インドダックス」のホットウォレットには合計で約4億ドル(約571億円)相当の暗号資産が保管されていたとのことです。

そのため今回ハッキング被害は比較的小さく済んだと言えるでしょう。

セキュリティー会社からの警告があった後、「インドダックス」はこのハッキングの事実を認めシステム全体を一時的に停止して調査を行なうと発表しました。

またその発表の中で同社は、顧客の資産は100%安全であることを強調しています。

その後、「インドダックス」のメンテナンスは継続しています。

現在「インドダックス」を装った偽のフィッシングアカウントが出現していることも警告されており、混乱に乗じたハッキングにも注意する必要があります。

●東南アジア通貨、上昇の勢い失速も-モメンタム指標がリスク示唆

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米金融当局の政策転換を巡る投資家の高揚感が薄れるにつれ、これまで対ドルで急伸している東南アジア通貨の勢いが失われる可能性があると指摘されています。

少なくとも一つの注視すべきモメンタム指標が示唆しているのです。

ブルームバーグの集計データによると、東南アジア通貨の相対力指数(RSI)は80を突破。

一般的に買われ過ぎと見なされる水準を大きく上回ったのです。

9月に米利下げが実施されるとの観測が広がる中、東南アジア通貨は今月に入り地域別パフォーマンス番付で上位4位を占めていました。

DBSグループ・ホールディングスは8月27日のリポートで、シンガポール・ドルは短期的に値固めの展開となる公算が大きく、他のアジア通貨と同様に「買われ過ぎ」だと指摘しています。

タイ・バーツ、マレーシア・リンギット、インドネシア・ルピア、フィリピン・ペソ、シンガポール・ドルから成るブルームバーグの指数は8月に入り4%余り上昇。

月間ベースで少なくとも2015年以来の好パフォーマンスを記録しています。

アジア通貨は米利下げ期待を背景に軒並み上昇しましたが、東南アジア通貨以外は比較的上げ幅が小さく、ブルームバーグ・アジア・ドル指数のRSIは69でした。

キャピタル・エコノミクスはリポートの中で、「アジア通貨の大半は、最大の上昇局面が終わったとしても、時間とともにさらに値上がりすると予想している」としています。

一方で、「相対的な金利による押し上げは恐らく一巡したと考えている」と説明しました。

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